「訓練された免疫」の誘導

「訓練された免疫」の誘導

 

目次 リンク集 医療関係(さいたま) 

👉訓練された免疫状態とは

 BCGを接種しておくと
単球からIL-1βなどの
サイトカインの分泌が恒常的に
誘導されるようになります
(=「訓練された免疫状態」と名付けられています) 
 
このため、その後の各種ウイルス感染
に対しても、 IL-1β
が効率的に分泌されるようになり
抵抗力が向上します。
 
Artsの研究では、BCG接種による
黄熱病ウイルスに対する防御効果を
確認しています。
 
BCG接種後の方が、効率的にIL-1β産生されるようになります。
 
※ 新型コロナウイルス感染症の予防策としてBCGの治験が欧米にて
実施されています
 
Arts,  Cell Host Microbe 2018 オランダ

👉BCGインデックスが高いほど 死亡率が低い

社会的環境の類似したヨーロッパ諸国に
おけるBCG普及率とCOVID-19パンデミック 初期1ヶ月間の死亡率の比較
BCG普及率が10%増加するとCOVID-19死亡率が10.4%減少する
BCGインデックスが高いほど 死亡率が低いことが示されています。

 
Escobar, PNAS 2020.7.9
 

👉COVID-19の死亡率に影響する因子

①HDI(人間開発指数)
②65歳以上の人口の割合
③都市化
この3つの因子は
COVID-19の死亡率と
一貫して正の相関がありました。
 
都市化・生活環境の清潔化の
進んだ国で
COVID-19の死亡率が著しく高い
Escobar, PNAS 2020.7.9
 
※ 「筋肉を鍛えること」と、「免疫を鍛えること」はよく似ています。
両者とも、適度な刺激が必要です。清潔すぎる環境下では、適度な免疫刺激が入りません。

👉 BCGの接種時期

乳児期:「訓練された免疫」が生涯与えられる 年長以降:「訓練された免疫」が与えられないか短い しかし、短期間(例 6~12か月)の保護効果である としても 
 医療従事者等や
肥満・糖尿病等の既往のある人において
 重度のCOVID-19を改善する可能性がある
Escobar, PNAS 2020.7.9

👉 COVID-19のスラムパラドックス

スラム地域のSARS-CoV-2の抗体陽性率が高くCOVID-19死亡率は非常に低いことが示されています。 例)インド 大ムンバイ市  ・SARS-CoV-2抗体陽性率  スラム地域 57%  ⇒ 抗体がしっかり産生され、ウイルスが排除されています。   非スラム地域 16% ・スラム地域の死亡率は、わずか 0.05-0.1% でした。 ブラジルのスラム街では、COVID-19は、蔓延はありませんでした。 Bousquet, Allergy 2020 Aug 6
※ スラム地域では、普段から、様々な感染刺激を受けていることにより、免疫が活性化していると考えられます。

👉 「広範な防御効果」

BCGワクチン接種が
結核菌感染防御 以外
広範な防御効果
を持っているという十分な疫学的証拠があります

Escobar, PNAS 2020.7.9論文から引用

※ なお、日本の乾燥BCGワクチンの
適応は「結核の予防」のみです。 

 

👉 訓練された免疫

感染していない宿主では、 ウイルス複製を制御できるように 自然免疫反応を高める戦略が必要です。 COVID-19の後期では、 重度の合併症を防ぐために、 過炎症ループを絶つことを目的と すべきです。 Netea, Cell 2020 181 969

👉BCGの多面的効果

BCGのワクチン接種を受けて 自然免疫メカニズムが 
「訓練された免疫」によって 促進された健康な個人では、
 
・ウイルス血症の減少、 
・ウイルス除去の迅速化、 
・その後の炎症の減少、 
・症状の減少、 
・回復の迅速化 
 
につながる可能性があります 
 
Moorlag Cell Rep Med Aug 25 2020

👉「訓練された免疫」の誘導は

教習所で、車の運転を習うことに似ています


菌体 or ウイルスをまるごと使用したワクチン(BCGなど)による
「訓練された免疫」の誘導は SARS-CoV-2に対する感受性と重症度を軽減するための 重要なツールとなる可能性があります。 Netea Cell 2020 ※ 車の運転・未習得ですと 暴走の可能性が高まることに例えられます。



👉「訓練された免疫」の誘導について
最もよく研​​究されているワクチンは、BCGです。

BCG接種を受けた個人は、 BCGを受けていない個人と比較して 気道感染症が73%減少していました 。 (Nemes, 2018 NEJM) Netea, Cell 2020 181 969

👉 BCGは危険か?

日本のメディアは、BCGは、乳児用であり、
成人に接種するのは、「危険性がある」と 報じ、定期予防接種以外の接種を抑制しました 2020.3頃 オランダのグループは、過去5年間に 成人に対しBCGを接種したグループと 対照群について、COVID-19症状と安全性を 調査しました。 
 
Moorlag Cell Rep Med 8.25 2020

👉 BCG接種が自然免疫反応を増強することにより

有害な影響を与える可能性があるのでは という懸念の答えは?

オランダの研究は、 過去5年以内のBCGワクチン接種は、 COVID-19パンデミック中の 何らかの症状(sickness)の増加や 症状の重症度とは 関連がないことを示しました。 Moorlag Cell Rep Med2020

👉 BCG接種とCOVID-19の症状

・BCG接種者(過去5年以内)266名(成人)
・対照群164名 COVID-19パンデミックの間(2020.2-4月) における両群の症状を比較した。 ・何らかの症状(sickness)有り」の比率は、 BCG群にて低下しました(調整オッズ比0.58 P<0.05)
極度の倦怠感 BCG群にて低下しました
Moorlag Cell Rep Med 2020










👉 健康保持におけるBCGの新たな価値

を見出そうとする動きがあります

過去10年間、 ・種々の自己免疫疾患、 ・アレルギー疾患、 ・小児期の感染症に対する適応免疫反応の誘導 などを目的・対象として BCGを再導入する臨床試験が急増しています Kühtreiber, NPJ Vaccines 2018 3 23

👉BCGの接種時期

乳児期:「訓練された免疫」が生涯与えられる 年長以降:「訓練された免疫」が与えられないか短い しかし、短期間(例 6~12か月)の保護効果であるとしても 医療従事者等や肥満・糖尿病等の既往のある人において 重度のCOVID-19を改善する可能性がある Escobar, PNAS 2020.7.9

👉 BCGの他、生ポリオワクチンにも可能性があります

Netea, Cell 2020 181 969 生ポリオワクチンは、 病原性がときに生じるため 日本では、2012年で中止されました。 ※ BCGやかつての生ポリオ ⇒ 日本で、COVID-19の重症者が少ない「ファクターX」である 可能性があります

👉 BCGと気管支喘息

韓国(BCG 生下時及び、12歳でツ反陰性者に接種) の二次紹介病院・呼吸器科における研究 成人において、BCG瘢痕のサイズと  気管支喘息の有病率は、逆相関しました(P=0.01)  =BCG瘢痕サイズが小さい ⇒ 気管支喘息を発症しやすくなります Park Int J Med Sc 2015 12 668

👉 多発性硬化症(神経の自己免疫疾患)

最初は単一の臨床症状を呈します(=CIS) やがて、臨床的に確実な多発性硬化症(MS)へと進展します CISの段階でBCGを接種すると ⇒ MSへの進展を抑えることが示されました。 (60か月の観察 ハザード比0.52 p<0.05) ※ 18か月以降は、疾患修飾療法(DMT)あり Ristori Neurology 2014 82 41










👉 多発性硬化症(MS)と衛生仮説

・鞭虫(寄生虫)の有病率が高い ⇒ MS有病率↓ ・兄弟が多い⇒ MS有病率↓ ・ピロリ菌の血清陽性率が、MSで有意に低い 清潔過ぎる生活環境により、
人生の早い段階で、免疫活性化が不十分ですと

自己抗原に対する 異常な免疫応答が生ずる可能性があります Jakimovski, Vaccines2020 8 50

👉 1型糖尿病患者(平均罹患期間19年)にBCGを接種(4週間隔で2回)

・8年間フォロー ・プラセボ対照 2重盲検比較試験 3年後に、BCG群のみ HbA1cが低下し、低レベル(HbA1c 6.65%)で維持した。 =3年目以降、血糖値が長期的に低下しました。 マサチューセッツ総合病院 Kühtreiber, NPJ Vaccines 2018









👉 BCG誘発性の有酸素解糖

BCGは高血糖の原因に関係なく
血糖値を下げることができる可能性があります。 ストレプトゾトシン投与マウス (膵β細胞破壊 糖尿病モデル) に BCG(事前投与) ⇒ 高血糖を軽減しました。   ※ BCGだけでは、健康なマウスの 体重・血糖に影響は、ありませんでした。 NPJ Vaccines 2018 3 23

👉 BCG ⇒ T制御性細胞↑⇒ 自己免疫を予防 or 遅延

BCG:T細胞における 6つの主要なT制御性遺伝子(Foxp3など)すべてが 8週間までに 脱メチル化⇒免疫系がリセットされ、 ⇒これらT制御性遺伝子のmRNAの発現が増強されました。 Kühtreiber, NPJ Vaccines 2018 3 2



👉 1型糖尿病⇒BCG⇒ 血糖コントロールが改善

BCG: 細胞代謝を
酸化的リン酸化⇒初期の好気性解糖 に切り替えます。
この変化は、徐々に生じ、
細胞が調節された方法で
大量のブドウ糖を消費して
安全に、高血糖⇒正常(近い)血糖レベルへの
全身代謝シフトが起きます。 Kühtreiber, NPJ Vaccines 2018






👉 BCGとアルツハイマー病

BCG接種率が高い国(図中の灰色と黄グループ):
⇒ アルツハイマー病(AD)の有病率が低かった
BCG接種率が低い国(青とオレンジ) ・青:ADの有病率が高い国々(米国、英国など) ・オレンジ:ADの有病率の低い国々(スロバキアなど) に分かれました。 Gofri, Med hypothe 2019 123 95










👉 健常人にBCGワクチン接種する

① 自然免疫細胞が微生物に反応する能力 (サイトカイン産生能で評価) は高まります ② 同時に、循環血中の炎症性タンパク濃度により 測定される全身性炎症は、抑制されました BCGによる全身性炎症の抑制効果は、 男性でより顕著でした Koeken, J Clin Invest 2020 130 5591





👉 BCGワクチン接種後の循環炎症マーカーの減少

は、
・血漿コレステロール↓   アテローム性動脈硬化↓(マウス) ・多発性硬化症や1型糖尿病に対する  有益な効果(前向き研究) ・アトピーとアレルギー発生率↓の可能性 ・アルツハイマー病の発症↓の可能性

と関連すると 考えられます。 Koeken, J Clin Invest 2020 130 5591


👉 BCGとアルファ‐1‐アンチトリプシン

アルファ‐1‐アンチトリプシン(A1AT)の
血中濃度が高い
⇒ SARS-CoV-2感染↓・COVID-19重症度↓
BCG接種⇒訓練された免疫の誘導⇒A1ATの血中濃度↑(上昇します) Cirovic Cell Host Microbe 2020 28 322 ※ A1AT: 種々の炎症時に血中に増加する 急性相反応物質の一つです。

👉 アルファ‐1‐アンチトリプシンの抗ウイルス活性

アルファ‐1‐アンチトリプシン(A1AT)
抗ウイルスおよび抗炎症特性を持っている
ヒトの血液中に存在している
A1ATは、 SARS-CoV-2感染とCOVID-19病態において 最も重要な2つのプロテアーゼである 膜貫通型セリンプロテアーゼ2(TMPRSS2)と ADAM17を阻害します。 de Loyola, Rev Med Virol 2020 Aug 26

👉 COVID-19とACE2受容体数

炎症の上昇は、 SARS-CoV-2が細胞に感染する際に結合する 宿主ACE2受容体数の増加と関連する ACE2受容体数: 心血管疾患、糖尿病、喫煙、炎症性喘息などの炎症状態で↑ T H 2応答(寄生虫感染など)は、 ACE2受容体数を減少させる Robins, Evol Med Public Health 2020 Oct 20

👉 蠕虫(回虫など)抗原

は、 
TH2や制御性T細胞を 活性化する インターロイキン(IL)-12の産生を抑制し、 T H 1経路の誘導を遮断することにより、 炎症を積極的に抑制する Robins Evol Med Public Health 2020 Oct 20











👉 衛生仮説・旧友仮説

近年の医療、衛生、衛生の進歩⇒ 「旧友」(共生細菌、寄生虫など)への曝露↓ 炎症誘発性経路に傾く免疫調節不全↑ ⇒ 高収入の地域(=先進国) 慢性炎症性疾患 (アレルギー、自己免疫疾患、心臓血管疾患) の 高頻度の発症に寄与する Robins Evol Med Public Health 2020

👉訓練された免疫

BCG ⇒ 自然免疫細胞における
事実上の免疫学的記憶の誘導は、 「訓練された免疫」と呼ばれている BCGに加えて、 カンジダアルビカンス(真菌)の弱毒化株のような 他のいくつかの病原体による感染も、 自然免疫細胞における記憶反応を誘導する Basak BioEssays Mar 2021

👉BCGの効果の持続する期間
ブラジルやインドのように 出生時におけるBCG接種が盛んな国でも、 BCGの出生時接種を受けた 高齢のCOVID-19患者の死亡率は高い なぜ? 出生時にBCGを接種した人でも 10〜12歳を過ぎるとBCGの効果が低下し始め 40歳になるとほとんど効果がなくなる Basak BioEssays 2021


👉成人と高齢者

では
幼少期のBCG接種による 自然免疫記憶を引き出す メカニズムが失われている ⇒ SARS-CoV-2感染症の重症化 につながっている 健康な成人や高齢者に BCGワクチンを繰り返し接種する ⇒ 「訓練された免疫」を誘導し、 COVID-19に対する防御をもたらす可能性 Basak BioEssays 2021

👉結核以外の感染に対する保護効果

BCG ⇒ 「訓練された免疫」による 結核以外の感染に対する保護効果 ・乳児の急性下気道感染症の発生率↓    Stensballe 2005 ・高齢者の急性下気道感染症の発生率↓    Wardhana 2011 ・ヒトへの実験的ウイルス(YFV)感染  に対する保護効果    Arts 2018 Basak BioEssays 2021

👉ヒトパピローマウイルスに対する効果

BCGは ・結核以外の感染症に対する予防手段 ・非特異的な免疫調節療法としても大きな 可能性 ヒトパピローマウイルスによる イボを有する小児を 対象としたランダム化プラセボ対照臨床試験では BCGを投与した被験者の65%が 対照群と比較して完全な回復を示した Salem 2013 Basak BioEssays 2021

👉訓練された免疫

結核以外の感染に対する BCGの非特異的保護効果は、 = リンパ球系細胞ではなく 自然免疫細胞を「訓練」することに よって生じる 自然免疫細胞が本来持っている 再感染に対する防御能力は、 過去の別の病原体(例BCG)による 刺激によって誘発される Basak BioEssays Mar 2021

👉BCG ⇒ 制御性T細胞(Treg)の誘導

幾つかの研究(マウスモデル)は、 Tregが ・気道の炎症 ・アレルギー ・急性呼吸窮迫症候群(ARDS) を鎮めることを示している BCGは 炎症反応を誘発する (=訓練された免疫の誘導) 以外にも、さまざまな機序で Tregの増殖を誘発しうる Basak BioEssays 2021

👉BCGは、免疫系にブレーキのかけ方も教える

新生児における BCGワクチン接種は、 CD4 + CD25 + T細胞(=制御性細胞)による IL-10(抑制性サイトカインの一つ)産生を誘導する ※ BCGは、免疫系にブレーキのかけ方も教える Akkoc Pediatr Allergy Immunol 2010 Basak BioEssays Mar 2021

👉強力な免疫システムを持つ健康な人

早期の自然免疫応答が生じ、 SARS-CoV-2ウイルスを効果的に除去する ・高齢者 ・I型IFNシグナル伝達の抑制 ・無制限のウイルス増殖 ・DAMPやケモカインの過剰産生など 免疫応答が遅延している患者は 過炎症や組織損傷↑ ⇒ ARDS Basak BioEssays Mar 2021

👉BCGは、COVID-19に対する潜在的な予防免疫療法

であり、
・訓練された免疫  ・免疫調節 の両方を誘発し、 患者の病態生理学的状態に応じて免疫応答を 操作することにより、 疾患の重症度を軽減するのに役立つと 考えられる Basak BioEssays Mar 2021

👉一次防御の復活と、過炎症の抑制

COVID-19の治療を成功させるためには、
SARS-CoV-2ウイルスの 負荷を取り除くための 一次防御の復活と、 過炎症の抑制 の両方が必要である。 BCGは、病気のステージと病理学的状態に応じて、 両方のターゲットに働きかける 2方向性ではあるが時空間的に作用することができる Basak BioEssays 2021











👉2つのメカニズム
BCGは 
COVID-19に対し 2つのメカニズム ① アクセル 制御された炎症誘発性経路の誘導 (「訓練された免疫」とCD4 + T細胞の早期活性化) を介して 保護を与えることができる ② ブレーキ 過炎症状態の間 抗炎症または寛容原性経路を誘発して 過剰な炎症を鎮める Basak BioEssays Mar 2021

👉予防的保護
軽症や中等症の場合
BCGは訓練された免疫を誘導 ⇒予防的保護を提供 訓練された自然免疫細胞 ⇒IL-1β、TNF-α、IFN-γなどの 炎症性サイトカインを 局所的かつ制御された産生 ⇒抗ウイルス応答が改善 ⇒ ウイルス血症の減少 ウイルスの迅速な除去 炎症の抑制 につながる Basak BioEssays 2021

👉1型IFNシグナルを回復

COVID-19
1型インターフェロン(IFN-αなど)産生↓ BCGは 1型IFNシグナルを回復させ 必要な抗ウイルス反応を 再構築するのに役立つ可能性 Kativhuら(2016)は BCGワクチンの無細胞上清が ヒト新生児形質細胞樹状細胞(pDC)における IFN-α産生を誘導できることを示した Basak BioEssays Mar 2021


👉重症のCOVID-19患者では、
制御性T細胞数が減少

している。
BCGは、CD8 + 制御性T細胞の
抑制された活性を
活性化および促進する
Boer ProsOne 2014 Clin Vaccine Immunol 2015 ⇒ 免疫寛容をもたらし、
重症のCOVID-19患者の過炎症を
軽減することができる可能性 Basak BioEssays Mar 2021

👉骨髄由来サプレッサー細胞
BCGの効果を
持続させる役割を果たしている 可能性のあるもう1種類の細胞は、 「骨髄由来サプレッサー細胞」(MDSC)である。 BCG⇒ MDSCを活性化し、 エフェクターT細胞(炎症を促進するT細胞) の機能を抑制する ⇒ 炎症や敗血症を抑制する Martino 2010 Basak BioEssays Mar 2021

👉衛生仮説

ヒトの免疫システムの進化の大部分は

環境中の多数の非病原性微生物に 繰り返し感染する ことにより 獲得されてきた 衛生の向上 = 環境における微生物群の排除 ⇒ 自己免疫疾患やアレルギー疾患の 劇的な増加と強固に関連している 衛生仮説 Strachan 1989 Moulson Immunobiol 226 152052 2021


👉過去40年間


自己免疫疾患やアレルギー疾患の罹患率は
先進国で大幅に増加した 広範な研究により
微生物種がヒトの免疫反応を操作する
顕著な能力が明らかになっている 興味深いのは
微生物の刺激が
ヒトの免疫系の適切な発達と機能に
不可欠である点である Moulson Immunobiol 226 152052 2021

👉免疫機能の平衡モデル
免疫系は 相互に抑制するメカニズムによって 反応のバランスを維持する 動的に制御されたシステムである 免疫系の片方の腕が刺激される (例 1型ヘルパーT細胞活性化)と 競合する応答(=制御性T細胞など) によって ブレーキをかけようとする Moulson Immunobiol 2021

👉Th1活性化
は、
・Th1の直接刺激
・Th2反応の抑制 のいずれかによって達成される ⇒ 
・抗ウイルス作用の発揮
・抗腫瘍効果 を生じる この原理による使用例 ・化膿レンサ球菌にてがん免疫↑
・BCGワクチン⇒ 非浸潤性膀胱がん Moulson Immunobiol 226 152052 2021

👉 Th1の直接刺激

または、②Th2反応の抑制 のいずれかによって達成される ⇒  ・抗ウイルス作用の発揮 ・抗腫瘍効果 を生じる この原理による使用例 ・化膿レンサ球菌にてがん免疫↑ ・BCGワクチン⇒ 非浸潤性膀胱がん Moulson Immunobiol 226 152052 2021

👉BCGなどによるTh1刺激
⇒ 自己免疫疾患や アレルギー疾患を軽減しうる このアプローチは 免疫エフェクター分子(ヒスタミン、TNF-αなど)の 抑制とは対照的に 免疫バランスを回復させ 免疫機能を強化するという点で 現在使用されている抗炎症薬よりも 理論的に優れている Moulson Immunobiol 2021

👉形質細胞様樹状細胞(pDC)と

骨髄性樹状細胞(cDC)の絶対数の減少

COVID-19
・リンパ球減少症 ・NK細胞およびCD8 + T細胞による 抗ウイルス効果の喪失 (既報) 加えて 末梢血中の形質細胞様樹状細胞(pDC)と 骨髄性樹状細胞(cDC)の絶対数の減少 が認められた。 ※ 抗原提示に重要な骨髄細胞サブセットが 有意に影響を受けている Peruzzi Immonl Dec 14 2020

👉訓練された免疫の誘導因子

として提唱されているワクチン

(COVID-19の潜在的治療法) ・BCG (世界中で15以上のランダム化試験進行中) ・BCGベースのVPM1002ワクチン ・弱毒化生MTBVACワクチン ・経口ポリオワクチン ・MMRワクチン (Franklin 2020) Moulson, Immunobiol 226 152052 2021

👉ロサンゼルスの医療従事者
・BCG接種歴あり 1836名 ・接種歴なし 4275名 COVID-19関連症状 発熱  乾性咳  息切れ  筋痛  疲労感  味・臭いを感じない いずれも、BCG接種歴あり群の方が、 有意に頻度が低かった Nova-Rivas JCI 131 e145157 2021









👉ロサンゼルスの医療従事者

接種したワクチンの種類と 抗SARS-CoV-2IgG検査結果の関係 ワクチンの接種歴 ・BCG ・髄膜炎菌ワクチン ・肺炎球菌ワクチン ・インフルエンザワクチン BCGの接種歴がある場合のみ 抗SARS-CoV-2IgG陽性率が有意に低下した (感染防御効果があった) Nova-Rivas 2021

👉高齢者(65歳以上)へのBCG投与
感染症を防ぐか?
二重盲検
プラセボまたはBCGを投与し、12か月間追跡した。 新たな感染症の発症
・プラセボ 42.3%
・BCG 25.0% (ハザード比 0.55 P=0.039) 特にウイルス性の呼吸器感染症に防御効果を示した G-Bourboulis Cell 183 315 2020









👉高齢者(65歳以上)へのBCG投与:危険か?

二重盲検試験 
重篤な有害事象
・プラセボ 42.3%
・BCG 23.6% P=0.055 非重篤な有害事象
・プラセボ 25.6%
・BCG 36.1% P=0.215 いずれの有害事象もBCGに関連なし ※ 高齢者へのBCG接種は、安全である G-Bourboulis Cell 183 315 2020

👉ACTIVATE試験

高齢者の感染を防ぐための BCGワクチン接種による 「訓練された免疫応答の強化」 に関するランダム化臨床試験 SARS-CoV-2に感染しやすい高齢者を 保護する必要性から圧力が高まり ⇒中間解析 高齢者を新たな感染症(特に呼吸器感染症) の予防に大きな効果があった G-Bourboulis 2020

👉ACTIVATE試験

BCGを接種した高齢者では、 非接種者に比べて 感染症(主にウイルス性の呼吸器感染症) の発生率が 有意に低下した(BCG接種群のHRは0.21) これは、インドネシアや日本で行われた研究で BCG接種⇒呼吸器感染症が70〜80%減少した 結果と一致する G-Bourboulis Cell 183 315 2020

👉ACTIVATE試験

BCGワクチン接種者の

循環血中の 炎症性タンパク質(IL-6やIL-18など)の濃度が、 ワクチン接種前と比較して 増加していない ことが観察された。 =定常状態の炎症レベルは、 BCGによって増加しない G-Bourboulis Cell 183 315 2020

👉麻疹・ムンプス・風疹(MMR)ワクチン
は、
理論的にCOVID-19に対する予防効果があると
考えられている MMR II (メルク社)の接種を受けたことのある
COVID-19 患者の重症度と
MMR IgG 力価の関係が
調査された。 ⇒ ムンプス抗体価が高いほど、
重症度が低かった。 Gold mBio 11 e02628 2020









👉14歳

・MMRIIワクチンを接種後、
おたふくかぜの抗体価が 134 AU/ml を下回る(=陰性となる)平均年齢は 14 歳である ・CDC データ(米国)は、 実際に 14 歳が COVID-19 陽性症例の発生率と死亡リスクの両方が 急激に上昇し始めるピボットポイントである Gold mBio 11 e02628 2020

👉乳児と幼児の比較

米国では、
生後12カ月未満の乳児で診断された COVID-19の症例数は、 2歳児の症例数よりも65%多い この事実は 幼児が初めてMMR IIワクチンの接種を受けるのが 生後12~15ヶ月であることから、 「MMR II接種 ⇒ COVID-19発症抑制」  の関連性を裏付ける(可能性) Gold mBio 11 e02628 2020


👉MMRII接種後

麻疹・ムンプス・風疹の各IgG抗体価と COVID-19重症度 症状スコアとの比較 ムンプスIgG抗体価のみ ・COVID-19重症度と有意に反比例 ・COVID-19症状スコアと有意に反比例 していた ※ 米国は、おたくふかぜ単独ワクチンはない 3種混合ワクチンの形にて接種される Gold  mBio 2020








👉「訓練された自然免疫」は持続期間が短い

BCGに関連する「訓練された自然免疫」の研究では
感染に対する異種保護 (例えば上気道ウイルス感染症予防)効果が 3ヶ月~1年間(最長5年)持続する ことが分かっている 「訓練された自然免疫」は、 抗原特異的な獲得免疫の記憶よりも 可逆的で短命(持続期間が短い)と考えられる Gold mBio 2020






すずひろクリニック(さいたま市)


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