新型コロナ対策 口腔ケア

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 新型コロナ対策 口腔ケア

◎  コロナウイルス 感染後の最初の10日間: 患者は通常、無症候性のまま経過する (その間、高い感染性はある)が、 ウイルスは主として鼻粘膜、口腔粘膜、咽頭粘膜に 蓄積する(by アクティブなウイルス複製) Herrera Clin Oral Invest 2020 24 2925 元文献 Wolfel  Nature  2020 581 465 

 

◎ 新型ウイルス対策:うがい

感染後 最初の10日間 口腔内 鼻腔内で 増殖する この長い時期に、ウイルス不活化作用の あるうがい液でうがいを行う ⇒ ウイルス増殖を抑える可能性 ※ 比較:インフルエンザ 潜伏期1~3日 ⇒ うがいの効果は弱い 参考 Herrera Clin Oral Invest 2020 24 2925

 

◎ 塩化セチルピリジニウムやポビドンヨードなどを含む洗口液

SARS-CoV2に感染した人の口腔内ウイルス量↓ ⇒日常生活や歯科処置で発生する飛沫・エアロゾル中の  ウイルス量↓ ⇒・他者への感染のリスク↓  ・COVID-19の重症度↓ 可能性がある ※仮説 Herrera Clin Oral Invest 2020 24 2925 

 

◎ コロナウイルス⇒ 口腔に感染⇒ 唾液中に分泌

プレボテラ菌属(P.インターメディア菌:歯周病菌の1種など)に結合
⇒ エアロゾルとして下気道へ
⇒ プレボテラ菌に過剰発現されたタンパク

⇒ 宿主のNF-kB活性化 ⇒ 炎症↑ ※ 仮説です 参考 Sampson Br Dent J 2020 228 971 

 

◎ コロナウイルス⇒プレボテラ菌の特定タンパク質⇒炎症↑

SARS-CoV-2に感染した患者の肺: プレボテラ属菌の特定タンパク質が 過剰発現している ウイルス感染 ⇒プレボテラ菌の過剰発現した特定タンパク質が ヒトのNF-kB(炎症に関係する転写因子)と相互作用 ⇒COVID-19症状の重症化 Khan, Bioinfor. 2020 36:4065 

 

◎ NF-kB(炎症に関連する転写因子)は コロナウイルス誘発SARSで 主要な役割を果たす。
  NF-kBを介した炎症の抑制は、 SARS感染中の生存率の増加につながる可能性がある マウスモデルによる研究 DeDiego  J Virol 88 913, 2014 

 

◎ SARS-CoV-2は、NF-kB(炎症に関連する転写因子)と 直接的な相互作用を示さない 

Prevotella菌の過剰発現されたタンパク質は、 NF-kBの複数の相互作用を示す また、Prevotella菌に過剰発現されたタンパク質は、 コロナウイルスの増殖をサポートする A.A. Khan, Bioinformatics 2020 36:4065 

  

◎ ①歯周病に関連する疾患 と ② COVID-19重症化因子 には共通する疾患・因子が多い
  共通する疾患・因子: 糖尿病、肥満、老化、高血圧、COPD、喫煙 など 歯周病が、COVID-19重症化因子として作用する可能性がある(仮説) ※COVID-19患者の歯周状態は、今のところ報告なし P-Rubio Med Hypo 2020 144 109969 

 

◎ 歯周ポケット:SARS-CoV-2のリザーバー?

歯周病の進行: 歯周ポケット形成↑ ※ 歯周ポケットには、このウイルスの増殖を 助けるプレボテラ菌(歯周病菌の一つ)がいる   SARS-CoV-2も歯周ポケット内で増殖する可能性 ⇒ 口腔内へ ⇒ 歯周毛細血管 ⇒ 全身血流へ Badran Med Hypo 2020 143 109907 

 

◎ SARS-CoV-2が細胞に侵入する受容体の アンジオテンシン変換酵素2の分布 ① 口腔粘膜(特に舌粘膜)の上皮細胞、唾液腺 ② 肺、腸、心臓、腎臓 肺に比較し、唾液腺に発現が多い ⇒ 唾液腺がウイルスのリザーバーとなる可能性あり Xu, 2020 J Dent Res Herrera Clin Oral Invest 2020 24 2925 

 

◎ SARS-CoV-2: ACE-2以外の感染経路の可能性

ウイルスのスパイクタンパク質 ⇒細胞膜上のCD 147に結合しうる Wang bioRxiv  2020 歯周ポケットを構成する口腔上皮細胞:CD 147を発現する 歯周炎患者から回収した歯肉上皮細胞は CD 147発現↑↑ Badran Med Hypo 2020 143 109907


◎ COVID-19 重症化を防ぐために 口腔ケア対策が重要

口腔は、COVID-19患者の気管支肺胞洗浄液(BALF)中に認められた
病原体(Capnocytophaga, Veillonella, 他の日和見菌など)
のリザーバー(貯蔵庫)である可能性が高い

特に重症のCOVID-19患者では、
これらの感染を減らすために
効果的な口腔ケア対策が必要である

Bao, Front Microbiol 11 1840 2020

◎ リステリンクールミント

3つの異なるSARS-CoV-2分離株に リステリンクールミント (エタノール21%+エッセンシャルオイル)を加え 30秒間暴露した(=うがいする時間) 高い殺ウイルス活性を示した


Meister, J Infect Dis Jul 29 2020


◎ ポビドンヨードうがい液

3つの異なるSARS-CoV-2分離株に ポビドンヨードうがい液 (ポリビニルピロリドンヨウ素)を加え 30秒間暴露した(=うがいする時間) 高い殺ウイルス活性を示した



Meister, J Infect Dis Jul 29 2020

SARS-CoV-2感染と口腔乾燥症

・口内乾燥症(45.9%) ・味覚障害(59.5%) ・嗅覚障害(41.4%) は、 前駆症状として、 または COVID-19の唯一の症状として 出現する可能性がある ※口の渇きにも注意が必要 イタリア・後ろ向きコホート研究 Fantozzi, Am J Otopharyngol 41 102721 2020

◎ 細胞老化

細胞老化:正常培養細胞は
約50回分裂・増殖(Hayflick限界) した後も、死滅せず、 安定的に細胞周期が停止している状態に至る 正常細胞では ストレス因子⇒ 活性酸素種 によって 老化に似た表現型が 早期に誘発されることがある(ストレス誘発性早期老化) Martinez  J Clin Med 10 279 2021

◎ 細胞老化とビメンチン細胞表面発現

歯周病菌
⇒ 吸引によって肺組織へ散布される
⇒ 歯周病菌由来LPS ⇒ 肺上皮細胞の老化を引き起こす ⇒ ビメンチンを高度に発現 ⇒ SARS-CoV-2細胞の付着、侵入、複製を促進する。 ※ ビメンチンは、SARS-CoV-2の共受容体として働く




Martinez, J Clin Med 10 279 2021



◎ 細胞表面ビメンチン

SARS-CoV や SARS-CoV2の 共受容体として作用する ※ ビメンチンは、細胞骨格タンパクの一つであるが 細胞がLPSなどの刺激を受けると、細胞表面に発現する





Yu  J Biomed Sci 23 14 2016 Martinez J Clin Med 10 279 2021



◎ 細胞表面ビメンチンと関節リウマチ

細胞老化
⇒ 粘膜細胞(口腔粘膜 気道粘膜等)表面に ビメンチン発現↑ ⇒ 酵素(好中球NET or 細菌由来)の作用により シトルリン化 ⇒ シトルリン化ビメンチンに対する自己抗体(ACPA) ⇒ 関節リウマチ発症  (発症機序の一部?)




Bang AR  2007 Ramos Int J Mol Sci 21 4675 2020


◎ COVID重症化の因子

・入院時の高IL-6とTNF-α血清レベル
COVID-19の重症度と患者の生存の 強力な予測因子である(Del Valleら 2020) ・もう一つの重要なパラメータは ウイルス量であり、 重症COVID患者では 軽症の患者の約60倍のウイルス量がある(Liu 2020) Martinez J Clin Med 10 279 2021


◎ 歯周病とガレクチン-3

重度の歯周病とCOVID-19の強い関係は、
ガレクチン-3によって媒介される ウイルス付着と免疫反応↑ によって説明できる Covid-19パンデミック期間中、 厳格に口腔衛生を維持する (=歯周病をコントロールする) ことが重要である Kara 2020 Martinez J Clin Med 10 279 2021


◎ ガレクチン-3

ビメンチンと同様、 老化細胞にて発現↑ SARS-CoV-2の付着と 細胞侵入を促進する可能性 ※ ガレクチン:ガラクトースを認識し 結合 or 糖鎖同士を架橋するタンパクファミリー Martinez J Clin Med 10 279 2021

◎ 重度のCOVID-19感染リスク

・高齢者における一つ以上の併存疾患 ・慢性的な呼吸器疾患(COPDなど) ・加齢に伴う宿主免疫防御の低下(免疫老化) ・慢性の軽度の全身性炎症(高度肥満 糖尿病 歯周病など) ・リンパ球減少症 ※ 経時的な老化自体の直接的な結果ではない Martinez J Clin Med 2021


◎ 歯周病とCOVID-19

不十分な口腔衛生と歯周細菌の誤嚥が
COVID-19肺感染症を 悪化させる可能性がある ※ 病原性歯周細菌の吸引が サイトカイン、特にIL-6↑⇒肺の炎症を悪化させる ⇒⇒ 「適切な口腔ケア」は 肺の炎症の悪化を防ぐための 重要な要素である 高橋 2020 Martinez J Clin Med 10 279 2021


👉 SARS-CoV-2スパイクタンパクは、 LPS(グラム陰性菌由来の分子)の成分である
リピドAと相互作用する

⇒ LPS単独と比較して 炎症反応の有意な増強をもたらす ※ スパイクタンパク+低レベルのLPS ⇒ NF-kBの活性化を増強する ⇒ 炎症↑↑ Petruk bioRxiv 2020 Martinez J Clin Med 2021


👉口腔液を吸い込む ⇒ 歯周細菌が高齢者の下気道に広がる

・加齢 or  ・グラム陰性歯周病菌(P.ジンジバリスなど)のLPSの作用 ⇒ 気道上皮細胞の老化細胞↑↑ ⇒ SARS-CoV-2の複製↑ ※ 不十分な口腔衛生と歯周細菌の誤嚥が COVID-19肺感染症を悪化させる可能性 Martinez J Clin Med 2021



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