✅目次 リンク集 医療関係(さいたま)
新型コロナに有効性が提唱されている薬剤
新型コロナウイルス感染症対策として、世界中で、さまざまな薬剤の有効性を示唆する論文として発表されています。記載されている論文(一部)のエッセンスをまとめてみました。
2020.11月下旬現在、COVID-19が重症化した際には、レムデシビルの使用が承認されています。アビガンは、承認申請中ですし、デキサメサゾンも使用されています。
しかし、特に初期における治療薬は、まだ不十分であるのが現状です。
新型コロナウイルス感染症対策として承認されてはいないものの、有効性が提唱されている薬剤について、紹介します。
※ 免責事項 あくまでも論文のご紹介です。見解は、それぞれの著者の見解です。
紹介者としましては、「何か少しでもご参考になる点があれば」というスタンスです。何か取り入れようと思われる場合には、当該の論文をしっかりお読みになった上で、自己責任にてお願いいたします。
◎ 検討されている戦術的治療 ※ 主として重症者用
アクテムラ/トシリズマブ。アビガン/ファビピラビル; アジスロマイシン; バリシチニブ/オルミアント;
ベバシズマブ/アバスチン; Calquence / Acalabrutinib; クロロキン; コルクリス/コルヒチン; 回復期血漿; EIDD-2801; フィンゴリモド/ギレニア; ガリデシビル; ヒドロキシクロロキン; イラリス/カナキヌマブ; イベルメクチン; ジャカフィ/ルキソリチニブ; カレトラ/ロピナビル/リトナビル; ケブザラ/ Sarilumab;
キネレット/アナキンラ; レロンリマブ; マブリリムマブ; メチルプレドニゾロン; オルミアント/バリシチニブ; オテズラ/アプレミラスト; レムデシビル; タミフル/オセルタミビル; ウミフェノビル/アルビドール; ゼルヤンツ / Tofacitinib
Kostoff, Toxicol Rep 2020; 7: 1448–1458
◎ COVID-19と好中球細胞外トラップ(好中球ネッツ)
COVID-19では、好中球増加症が
予後不良を予測する因子となる
好中球増加症・活性化⇒好中球ネッツ形成・放出
⇒微小血栓症と急性呼吸窮迫症候群(ARDS)
※ ネッツは、病原体に対する感染防御には有益
Barnes, JEM 2020 1: 217
◎ COVID-19: 肺の剖検標本(1例)における好中球浸潤
・肺毛細血管 に 広範囲の好中球浸潤
・フィブリン沈着 を伴う 急性毛細管炎
・肺胞腔への好中球遊走
敗血症なし。細菌培養は陰性
※ COVID-19肺病変における好中球の中心的役割を示す
◎ COVID-19と好中球ネッツ形成・放出
この過程を薬剤の「標的」にすることにより
COVID-19の重症度を抑えられる可能性がある
ネッツ形成に関与する酵素
・好中球エラスターゼ
・PAD4
・ガスダーミンD
※ こららの「酵素阻害薬」が候補となりうる
Barnes, JEM 2020 1: 217
◎ 好中球ネッツ形成に関与する酵素
・好中球エラスターゼ
細胞内タンパク質を分解
⇒ 核崩壊を引き起こす
・PAD4
ヒストンをシトルリン化
⇒ 染色体DNAの脱凝縮と放出を促進する
・ガスダーミンD
細胞膜に穴をあけ、細胞の破裂を促進
⇒ DNA・関連分子の放出を促進する
Barnes, JEM 2020 1: 217
◎ COVID-19の血栓症に 好中球ネッツが関与
急性の心臓および腎臓の傷害は、
COVID-19の重症患者によく見られ、
COVID-19死因の一つとなる。
血管内の好中球ネッツは、
動脈と静脈の血栓症の開始と増悪に
重要な役割を果たす。
Barnes, JEM 2020 1: 217
◎ COVID-19: 好中球ネッツによる「自爆攻撃」
自爆してはいけないところで自爆する ⇒ 体を傷害する
・肺胞内で自爆⇒ 肺胞内ゲル化 ⇒ 肺ゲル腫(ARDS)
・血管内で自爆 ⇒ 動脈・静脈で血栓
⇒ 心臓・腎臓等の傷害
参考 Barnes, JEM 2020 1: 217
◎ COVID-19と好中球ネッツ(NET)
※ NET⇒マクロファージに
IL1β(インターロイキン1β)を分泌させる
重症のCOVID-19で 「NET–IL1βループ」 が活性化される
⇒NETとIL1βの産生が加速され、
呼吸代償不全、微小血栓の形成、異常な免疫反応が
加速される可能性
Barnes, JEM 2020 1: 217
◎ COVID-19とコルヒチン
コルヒチンは、
好中球の
・炎症部位への動員
・IL1βの分泌
これらを二つとも阻害できる既存の薬物。
COVID-19において
コルヒチンを使用する試験が進行中である
※ コルヒチンは、痛風発作に使用されている薬剤
Barnes, JEM 2020 1: 217
◎ メラトニンとCOVID-19
メラトニン:脳の松果体で生合成されるホルモン
睡眠の質を改善する
※ 睡眠不足はウイルス感染に対する免疫反応を弱める
メラトニンの新型コロナウイルス感染症に
対する効果の可能性が 示唆されている。
Juybari Virus Res 2020 Oct 2; 287
◎ メラトニン: 抗酸化剤・抗炎症剤の作用がある
メラトニンが、ウイルスおよび細菌感染
によって誘発される
・急性肺傷害(ALI)
・急性呼吸窮迫症候群(ARDS)に対抗する
他の薬剤と組み合わせで、
メラトニンは
COVID-19の治療上、
役割を果たす可能性がある
Juybari, Virus Res. 2020 Oct 2; 287
◎ SARS-CoV-2は、コウモリ由来のウイルス
※ コウモリでは病原性なし
コウモリは、メラトニン産生レベルが高い
⇒ 発症を抑えている可能性がある
ヒトのメラトニン生産レベルは
コウモリよりも著しく低い
⇒ COVID-19発症に関与している可能性
Juybari, Virus Res. 2020 Oct 2; 287
◎ 老化⇒ メラトニン分泌↓
老化すると、夜間のメラトニンのピークは
通常 かなり減少する(個人差 大)
ある高齢者では、夜間の値は、日中の値と
ほぼ同じ(低い)
夜間の値が穏やかな減少のみの高齢者もいる
Aging Dis 2012 3 194
メラトニン分泌分泌↓ ⇒ COVID-19のリスク↑
◎ SARS-CoV-2ワクチンの有効性:
健康な若年者と比べ
高齢者やその他の高リスク集団では
おそらく劣ると推測される
予防接種に加え
メラトニンなどの免疫調節剤を
使用すると
免疫系が損なわれている患者と健康な患者の両方で
ワクチンの有効性が高まる可能性がある
Juybari Virus Res 2020 Oct 2 287
◎ メラトニンは
ナチュラルキラーとCD4 +細胞の数を増やし、
効果的なワクチン応答に必要な
サイトカインの産生を増幅する
(Carrillo-Vico, 2006)
睡眠不足は
ウイルス感染に対する免疫反応を弱める
メラトニンは
睡眠の質を改善する重要な因子である
Juybari, Virus Res. 2020 Oct 2; 287
◎ 抗SARS-CoV2剤として可能性のある天然の物質
・カロラクトン(粘液細菌Sorangium cellulosumが産生)
・ホモハリングトニン
(オマセタキシン 植物のイヌガヤ由来)
・エメチン(植物のトコン由来)
・セファランチン(植物のタマサキツヅラフジ由来)
Wang, Front Pharmacol 2020 11 1013
◎ セファランチン
植物の玉咲ツヅラフジ(台湾に自生)由来
1934年 近藤らにより単離された
適応 円形脱毛症など
抗ウイルス効果、抗マラリア効果、
抗癌効果を有する(Fang 2013)
in vitroでSARS-CoV-2複製を効果的に阻害した
(大橋 渡士 2020)
Wang, Front Pharmacol 2020 11 1013
◎ カロラクトン
粘液細菌(南方熊楠の粘菌とは別物)由来
メチレンテトラヒドロ葉酸デヒドロゲナーゼ1を
阻害する作用を有する
この酵素は、RNA複製のための重要な宿主因子である
Vero細胞におけるSARS-CoV-2複製を強く阻害した (Anderson 2020)
Wang, Front Pharmacol 2020 11 1013
◎ カロラクトン(続き)
SARS-CoV-2⇒ ヒトの気道粘膜上皮細胞へ侵入(感染)
⇒ 細胞内の酵素を拝借して、
ウイルスの複製のために使用する
※ 特に重要な酵素がMTHFD1:この酵素の所有者はヒト
カロラクトン⇒MTHFD1活性を抑える
⇒SARS-CoV-2の増殖を抑える
Wang, Front Pharmacol 2020
◎ カロラクトン
ミュータンス菌(虫歯菌)の
バイオフィルムを破壊する
真核生物(人など)に対して非毒性
Krunze 2010
カロラクトンを組み込んだ歯科用複合材料は、
ミュータンス菌バイオフィルムに対する
強力なin vitro活性を維持する
Apel 2013
Donner, Sci Rep 2016 6 29677
◎ カロラクトン
現在使用されている抗生物質に
耐性のある病原体の出現は
世界的な脅威
⇒ 新規の標的と作用機序を持つ抗菌薬の探索は重要
Donner mSphere 2017
カロラクトンはその候補の一つ
肺炎球菌(TIGR4、血清型19A臨床分離株)の
増殖を抑制した
Donner Sci Rep 2016 6 29677
◎ 抗SARS-CoV2剤として可能性のある
天然の物質からヒントを得た小分子
・ イベルメクチン
(大村智博士・キャンベル博士が開発
2015年 ノーベル賞)
・ GS-5734
・ EIDD-2801
Wang, Front Pharmacol 2020 11 1013
◎ イベルメクチン
Wagstaffらは、
本薬が
in vitroにおけるSARS-CoV-2 RNA複製の制御に
効果的であり、
48時間以内にウイルスが
5,000倍減少することを示した 2020
承認されたイベルメクチンの投与量だけでは、
COVID-19の治療に理想的な投与量ではない
Schmith 2020
Wang, Front Pharmacol 2020
◎ GS-5734(レムデシビル)
ツベルシジン+トヨカマイシン(西村 1956)
が出発点の化合物
SARS-CoV-2 RNA依存性RNAポリメラーゼの
RNA結合チャネルに
結合する Wu 2020
2020.5 米国FDAは、
SARS-CoV-2感染症を治療するため
の緊急使用を許可した(日本も2020.5)
Wang Front Pharmacol 2020
◎ EIDD-2801
EIDD-2801(Nヌクレオシドアナログ)は、
経口で生物学的に利用可能な有望な
抗ウイルス剤であり、
エモリー大学のプレンパーらに
よって発見された
人間の血漿で発見されたウリジン
⇒N 4-ヒドロキシシチジン
(広域スペクトルの抗ウイルス剤)
が出発点
Wang, Front Pharmacol 2020
◎ エブセレン(有機セレン低分子化合物)
SARS-CoV-2メインプロテアーゼ
を阻害する⇒ COVID-19候補薬の一つ
SARS-CoV-2感染症の抑制に
非常に効果的であり(EC 50 = 4.67μM)、
毒性が低い(ラット)。
人間に対する安全性が複数の臨床試験で
継続的に評価されている
Wang Front Pharmacol 2020
◎ アルファ‐1‐アンチトリプシン(A1AT)
抗ウイルスおよび抗炎症特性を持っている
ヒトの血液中に存在している
A1ATは、
SARS-CoV-2感染とCOVID-19病態において
最も重要な2つのプロテアーゼである
膜貫通型セリンプロテアーゼ2(TMPRSS2)と
ADAM17を阻害する。
de Loyola, Rev Med Virol 2020 Aug 26
◎ アルファ‐1‐アンチトリプシン(A1AT)の
血中濃度が高い
⇒ SARS-CoV-2感染↓・COVID-19重症度↓
BCG接種⇒訓練された免疫の誘導⇒A1ATの血中濃度↑
Cirovic Cell Host Microbe 2020 28 322
※ A1AT: 種々の炎症時に血中に増加する
急性相反応物質の一つである
◎ ファモチジン(胃薬)は、
SARS-CoV-2ゲノム
でコードされる酵素3-キモトリプシン様プロテアーゼを
阻害する可能性があると予測された
・入院から24時間以内にファモチジン開始(84名)
・非使用(1620名)
ファモチジン投与群 生存した比率が高い(P<0.01)
Freedberg, Gastroenterol 159 1129 2020
◎ ガスター(ファモチジン)とCOVID-19
ファモチジン投与群
・気管挿管なしで生存した比率が高い(P<0.01)
・生存した比率が高い(P<0.01)
・フェリチンが低値だった
(中央値708 非使用者846 P=0.03)
プロトンポンプ阻害薬(PPI)には、
このような効果はない
Freedberg, Gastroenterol 2020
◎ 高齢者(65歳以上)のインフルエンザワクチン接種率は、
COVID-19による死亡率と負の相関を示す
インフルエンザワクチン接種率の10%↑⇒COVID-19死亡率の28%↓
=高齢者集団において
COVID-19による死亡率に対する
インフルエンザワクチンの潜在的な
保護効果を示唆(米国)
Zanettini, medRxiv Jun 26 2020
◎ 経口組換えメチオニナーゼとCOVID-19
経口組換えメチオニナーゼ
(=メチオニンを分解する酵素)投与
⇒ 体内のメチオニン枯渇
⇒ SARS-CoV-2のRNAキャップ構造のメチル化を阻害
⇒ SARS-CoV-2の複製を阻害する可能性
Hoffman, in vivo 34 1596 2020
◎ 紅藻由来のカラギーナン鼻スプレー
⇒ 幅広い抗ウイルス効果
ウイルスが確認された風邪に対し
・疾患の期間が短縮
・ウイルスのクリアランスが増加
・症状の再発が減少
鼻腔用スプレーBisolviral®
(ベーリンガーインゲルハイム)
海外で発売されている
Pereira J Appl Phycol 2020 Jun 1
◎ 6 µg / mLという低濃度のイオタカラギーナン
(ビソルバイラル鼻スプレーの主成分: 紅藻由来)
が、ベロ細胞培養において
SARS-CoV-2感染を阻害することが示されている
Bansal, bioRxiv 2020 8.19
※ ビソルバイラル
(ベーリンガーインゲルハイム社)
の
イオタカラギーナンの濃度は、
1.2 mg/ml
◎ ロシアのスプートニクVワクチン:91.4%の有効性
(18,000人以上の2回目の中間分析)
アデノウイルス(Ad)をベクターとして使用
SARS-CoV-2の表面タンパク質であるスパイクを
コードする遺伝子を送達する
利点:標準的な冷蔵庫に保管できる
Kupferschmidt, Science Nov 24, 2020
◎ 2型糖尿病は
SARS-CoV-2感染に対する感受性は
高めない
しかし、2型糖尿病はCOVID-19の
より悪い結果と関連する
2型糖尿病がCOVID-19を発症すると、
血糖値の制御が不十分な場合、
代謝制御が良好な被験者と比較して、
死亡率が著しく高くなる
Solerte Diabetes Care 43 2999 2020
◎ 2型糖尿病でCOVID-19を発症した患者
①群 169名 標準治療+シタグリプチン
(2型糖尿病薬、DPP-4阻害薬)
②群 169名 標準治療のみ
①群 の死亡率が有意に低下した(ハザード比 0.44)
※ DPP-4がSARS-CoV-2の標的細胞への侵入を促進する可能性
Solerte, Diabetes Care 43 2999 2020
◎ 重感染(重複感染)
重感染の有病率は、
COVID-19患者間で異なり
非生存者では0%~50%の範囲だった
報告された共病原体:
細菌、マイコプラズマニューモニアエ、カンジダ
ウイルス(インフルエンザ、ライノウイルス、コロナウイルス、HIV)など
Jean, J Microbiol Immunol Infect 2020 53 436
◎ COVID-19における重感染:
ウイルス性の場合
最も多い同時感染性ウイルスは?
答 A型インフルエンザウイルス
Jean, J Microbiol Immunol Infect 2020 53 436
◎ COVID肺炎にて長期入院(> 6日)の際は、
以下をカバーする抗生物質:
・黄色ブドウ球菌(MRSAを含む)
・多剤耐性肺炎球菌
・クレブシエラ・ニューモニエ
・緑膿菌
・アシネトバクター・バウマニ
の 慎重な投与が推奨される
(潜在的な重感染対策)
Jean, J Microbiol Immunol Infect 2020
◎ スタチン
👉スタチンは、
・心血管リスクの軽減
・COVID-19における自然免疫反応を↓
と報告されている
COVID-19の重症患者のための
マサチューセッツ総合病院ガイドは、
特にICUの入院患者において、
スタチンの使用を検討することを提唱している
Rizk, Drugs 80 1267 2020
👉COVID-19患者において
心筋傷害があると
記載された2,746人の
多施設後ろ向きコホート研究:
スタチンには保護効果があり、
生存率の改善に関連している
(ハザード比 0.57、95%CI 0.47–0.69)
Lala, J Am Coll Cardiol 2020 76 533
👉SARS-CoVに感染⇒MyD88遺伝子の誘導↑
⇒NF-kB経路が活性化⇒ 炎症↑
スタチンはMyD88経路を阻害⇒炎症↓
(※ 低酸素時およびストレス下では
MyD88レベルを維持する傾向もある
⇒ COVID-19患者に保護効果をもたらす可能性)
Rizk, Drugs, 80 1267 2020
◎ ラマトロバン(バイナス)
PGD2⇒DP2受容体⇒
ウイルスに対する宿主の免疫応答を抑制する
SARS-CoVに感染したマウス:
PGD2は気道で2〜5倍に増加
年齢とともにPGD2は、増加する
PGD2 / DP2シグナル伝達の阻害(by ラマトロバン):
COVID-19における
免疫機能障害およびリンパ球減少症に対する
免疫療法アプローチとしての可能性
Rizk Drugs 80 1267 2020
◎ 抗アンドロゲン作用薬
👉膜貫通セリンプロテアーゼ2(TMPRSS2)は
アンドロゲン(男性ホルモン)に暴露されると
過剰発現する
禿頭症は
COVID-19でARDSを発症する男性に
特に存在することが
臨床的に観察されている
=アンドロゲンがSARS-CoV-2の感染力と
病因に直接関連しているという仮説
Cadegiani, Med Hypo 2020 Oct 143
👉AGAの男性
ジヒドロテストステロン(DHT)の
細胞内レベルが高い
⇒ COVID-19が重症化しやすい
AGAの薬剤(フィナステリド、デュタステリド):
DHTレベルを低下させる
=抗アンドロゲン作用がある
⇒ COVID-19の重症化を抑える可能性
Cadegiani, BMC Endocr Disord 2020 20 149
👉抗アンドロゲンアプローチは、
COVID-19男性患者を
保護しているよう見える
アンドロゲン抑制療法(ADT)を受けた
前立腺癌患者は、
部分的にSARS-CoV2感染症から
保護されるように思われる
Cadegiani, BMC Endocr Disord 2020 20 149
👉スピロノラクトン
・効果的な降圧作用
・心臓保護
・腎保護
・抗アンドロゲン特性
を有している
長く使用され、安全なミネラルコルチコイド
及びアンドロゲン受容体拮抗薬である
⇒ SARS-CoV-2からの保護を提供する可能性
Cadegiani, Med Hypo 2020 Oct 143
👉3つの主要な要因が
SARS-CoV-2の予後不良と相関している
・高血圧
・肥満
・アンドロゲンホルモン
思春期前の子供:
アンドロゲンレベルが低い⇒
COVID-19重症化から「保護」されている
Cadegiani, Med Hypo 2020 143 110112
👉可溶性ACE2
循環血中でSARS-CoV2と結合し
肺内皮(膜結合型ACE2を発現)への侵入を妨げる可能性
(=デコイレセプターとして働く)
以下は治療薬となる可能性がある
・リコンビナント可溶性ACE2
・可溶性ACE2レべルを上昇させる薬剤👉
例 スピロノラクトン
Cadegiani, Med Hypo 2020 143 110112
👉アンドロゲンシグナル伝達は
ACE2レベルの重要な
モジュレーター(調節機構)である
テストステロイン⇒ジヒドロテストステロン(DHT)⇒
アンドロゲン受容体活性化⇒ACE2発現↑
Samuel, Cell Stem Cell 27 876 2020
👉アンドロゲンシグナル伝達を弱める
5α還元酵素阻害薬が
標的細胞のACE2レベルを↓
⇒SARS-CoV-2感染力↓ の可能性
これらの薬剤は、
前立腺肥大やAGAに処方されている。
安全性プロファイルが良好で、
COVID-19の治療に転用できる可能性がある。
Samuel, Cell Stem Cell 27 876 2020
👉前立腺疾患(前立腺肥大症または前立腺がん)は、
他の危険因子とは無関係に
トロポニンT(COVID-19誘発性心臓損傷にて↑)が
高値となる確率を
50.5%(OR = 1.505 p値0.046)増加させた
アンドロゲンレベル↑⇒
・前立腺疾患↑
・COVID-19誘発性心臓損傷↑
Samuel, Cell Stem Cell 27 876 2020
👉英国バイオバンク(UKBB)の90,150人の
男性患者記録の独立したコホートを分析した
前立腺肥大症(BPH)
・COVID-19陽性男性の17.9%がBPHあり
・COVID-19入院男性の21.2%がBPHあり
・対照群では、12%のみBPHあり
であった。
Samuel, Cell Stem Cell 27 876 2020
👉英国バイオバンク(UKBB)の90,150人の
男性患者記録を分析:
冠動脈疾患(CAD)
・COVID-19陽性男性の24.5%がCADあり
・COVID-19陽性入院男性の28.8%がCADあり
・対照群男性では、16.7%がCADあり
P<0.001
⇒CADは、男性のCOVID-19陽性・入院の
危険因子
Samuel Cell Stem Cell 27 876 2020
👉多嚢胞性卵巣症候群の女性
・肥満
・インスリン抵抗性
・2型糖尿病(T2DM)
・高血圧
・脂質異常症
・閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)
・非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)
などと密接に関連⇒
SARS-CoV-2感染に直面した場合
予想よりも高いリスクにある可能性
Kyrou, BMC Medicine 18 220 2020
👉多嚢胞性卵巣症候群(PCOS):
重症であるほどビタミンDレベル↓
(負の相関あり)
低ビタミンD血症: COVID-19のリスク↑
PCOSを有する女性に対する
ビタミンD補充⇒
総テストステロン値およびCRPを
減少させる可能性がある
Kyrou, BMC Medicine 18 220 2020
👉男性型PCOS同等症候群が提唱されている
・性腺ステロイド産生↓
・性ホルモン結合グロブリン(SHBG)↓
・デヒドロエピアンドロステロン硫酸塩(DHEAS)↑
のうち1つ以上 + 早期発症の男性型脱毛症
2型糖尿病、肥満、高血圧併発しやすい
⇒COVID-19リスク↑
Kyrou, BMC Medicine 18 220 2020
◎ メトホルミン
👉利用可能な後ろ向き研究は、
まだ数が限られているものの、
COVID-19で入院した2型糖尿病患者において
メトホルミン使用者は、
非使用者と比較して
死亡率の低下が示されている。
Scheen Diabetes Metab 46 423 2020
👉メトホルミンの抗炎症効果
メトホルミンは
糖尿病の状態に関係なく
幾つかの抗炎症効果を発揮する
・TNFα↓(特に女性 Bramante, medRxiv 2020)
⇒ COVID-19に対する防御↑の可能性
・IL-6↓ (Chen, Diabetes Care 2020)
Scheen, Diabetes Metab 46 423 2020
👉メトホルミン
⇒ AMP活性化プロテインキナーゼ(AMPK)の活性化
⇒ ACE2のリン酸化
⇒ ACE2受容体のコンフォメーション変化
(=サイズの大きいリン酸基が加わるため)
⇒ 立体障害
⇒ SARS-CoV-2との結合が減少する可能性
Sharma, Diabetes Res Clin Pract 164 10183 2020
👉メトホルミン
・メトホルミンは、ガレガ・オフィシナリスという植物から発見された
・もともとインフルエンザやマラリアに対して使用されていた
・血糖低下は、その副作用の1つにすぎなかった
・多面的効果と広範な有用性により、21世紀のアスピリンと呼ぶ科学者もいる
Sharma 2020
ガレガ・オフィシナリス おぎはら植物園のサイトより引用
◎ オメガ3系長鎖多価不飽和脂肪酸(EPAなど)
=抗炎症作用がある
・西欧諸国におけるオメガ3脂肪酸の食事摂取レベルは
推奨値を大幅に下回っている
・オメガ-3補給が急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の
重篤な患者の臨床転帰を改善する可能性が
示唆されている
Weill Biochimie 179 275 2020
👉オメガ3系長鎖多価不飽和脂肪酸(EPAなど)
ウイルス感染の異なる段階において、
特にウイルスの細胞への侵入と複製において、
相互作用(=干渉)する可能性がある
Weill, Biochimie 179 275 2020
👉細胞膜には、
① 脂質2重層と
② 脂質ラフト(筏に似た構造体)がある。
オメガ3系長鎖多価不飽和脂肪酸は、
ACE2とTMPRSS2が主に発現している
脂質ラフトを調節する可能性がある。
=細胞膜の流動性、タンパク複合体の集合
ACE2およびTMPRSS2の発現・安定性・酵素活性を調節する
Weill 2020
👉ウイルスは、複製膜の合成に
必要な脂質分子を
宿主細胞に十分提供させるように
宿主細胞の脂質代謝を再プログラムする
=ウイルスにより宿主細胞の転写因子SREBP(ステロール調節エレメント結合タンパク質)が
活性化する
オメガ3脂肪酸は、この過程を阻害する
Weill, Biochimie 179 275 2020
👉レゾルビン、マレシン、プロテクチンとして知られる、
EPAとDHA(これらは、オメガ3系多価不飽和脂肪酸)
由来の
プロレゾルビンメディエーター(SPM
=抗炎症性脂質メディエーター)は、
NF-κB経路↓ ⇒炎症性サイトカインの合成↓
※ 炎症を鎮める方向に働く
Weill, Biochimie 179 275 2020
👉EPAとDHA(オメガ3系多価不飽和脂肪酸)
EPA由来のEシリーズレゾルビン、
DHA由来のDシリーズレゾルビン、プロテクチンは、
損傷組織における
白血球の浸潤を
抑制する⇒
有意な抗炎症効果を発揮する。
Weill, Biochimie 179 275 2020
最終更新日:2021.1.17