SARS-CoV-2 関連 ウイルス学的 疫学的 その他

 👉血漿フォンウィルブランド因子(VWF)

VWFの生体内生合成は 血管内皮細胞と巨核球(血小板を産生)のみ ⇒ 血漿VWFは、内皮細胞と血小板活性化の指標

👉血漿VWF抗原・活性↑


COVID-19発症者 ICU入室者 と 非ICU入院患者 の 比較 ICU入室者で 有意に 血漿VWF抗原・活性↑ Goshua Lancet Haematol 2020 7 e575

👉Δ382

SARS-CoV-2変異体
(ORF8領域に382ヌクレオチド欠損あり=Δ382) : COVID-19の症状が軽いことが示された シンガポールからの報告 この変異体:パンデミックの早い段階で武漢で出現し、 シンガポールと台湾に「輸出」された Young, Lancet 396 603


👉SARS-CoV-2変異体∆382に感染した患者

① 重篤なCOVID-19と強く関連する 炎症性サイトカイン、ケモカイン、成長因子 の濃度が低かった。 ② 肺炎を有する患者は、通常、 低酸素状態では低下する ストローマ細胞由来因子SDF-1αが高値であった。 ⇒ 軽症と関連 Young, Lancet 396 603

👉2020 3-4月の欧州型と 2020 6月以降の型 

国立感染研病原体ゲノム解析研究センターによると この2つの型の変異は、6塩基対 (推定3ヶ月の間に生じた変異) 6月中旬以降に、突然顕在化した 東京⇒全国 患者多数が、 一つのゲノムクラスターに 集約される 国立感染研 2020.8.5 https://t.co/1P7PkK467G



👉再感染するか?

個人が生涯を通じて
同じウイルス種からの複数の異なる感染に さらされる再感染は、 多くの呼吸器ウイルスの 顕著な特徴である SARS-CoV-2の出現以来 重大な懸念は、 人間がこの病原体による再感染を 経験するか否か 再感染する場合 ⇒ エンデミックとなるリスク Shaman, Science 2020 370 527


👉1型インターフェロン(IFN) 

ウイルス排除に重要 1型IFNに対する自己抗体出現⇒ COVID-19重症化 重症COVID-19肺炎の患者の約10%が 1型IFNに対する自己抗体が陽性だった 無症状・軽症者は、0% Bastard Science 370 eabd4585  2020
1型IFNに対する自己抗体出現⇒ COVID-19重症化 重症COVID-19肺炎の患者の約10%が 1型IFNに対する自己抗体が陽性だった 無症状・軽症者は、0% Bastard Science 370 eabd4585  2020 https://t.co/S1ULSSAZAP


👉COVID-19 1型インターフェロン(IFN) に対する自己抗体

(続き) 重症COVID-19肺炎の患者の約10%が 1型IFNに対する自己抗体が陽性 自己抗体陽性者の94%は、 男性だった その内 半数は、65歳以上だった ⇒ 重症COVID-19が、 ①男性 ②高齢者 に多い原因となる可能性 Bastard Science 370 2020


👉SARS-CoV-2ゲノムの突然変異率

は インフルエンザウイルスよりも遅いようだ この低い突然変異率は、 核酸複製中の校正(間違えた場合に その塩基を正しい塩基に治す) 機能の結果である可能性がある この機能は、RNAウイルスの中では コロナウイルスに限定されている Shaman Science 2020 370 527


👉男性

パンデミックの疫学データ:
COVID-19重症化と死亡のリスクが 女性に比べ男性の方が はっきり高い 男性の入院は 女性を約50%上回っている 重症SARS-CoV-2感染に対する 男性の感受性は著しく高い ICU入室数 女性1:男性 2~4 致死率 1~1.2-1.4 Ciabattini, Semin Immunopathol 2020 Nov 6


👉高齢者


SARS-CoV-2ワクチンの設計において 高齢者がワクチン接種の主な対象集団であることを 考慮に入れる必要がある 高齢者はCOVID-19の影響を 強く受ける可能性が最も高いが、 ワクチン接種に対する反応が 鈍い場合もある 高齢者がワクチンの臨床試験に含まれることは稀 Semin Immunopathol 2020 Nov 6


👉空中花粉濃度


空中花粉濃度が上昇 ⇒SARS-CoV-2感染率が上昇する 花粉への暴露⇒抗ウイルス性インターフェロン応答↓ ⇒ 特定の季節性呼吸器ウイルス感染率↑    SARS-CoV-2感染率も↑   空中の花粉は、平均してSARS-CoV-2感染率の 変動の44%を説明している 31か国からのデータ Damialis PNAS 2021.3.23


👉変異株 系統B.1.1.7


VOC202012 / 01(系統B.1.1.7)は、 2020年11月にイングランド南東部で出現し、 急速に定着に向かって広がっている 2021.2.15 英国のSARS-CoV-2の 約95%を占める この変異株は、 世界的に広がっている: デンマーク、スイス、米国でも同様の 伝達率の増加(59~74%) Davis Science Mar 3 2021


👉 膜貫通型セリンプロテアーゼ

SARS-CoV-2のSタンパク質は、 宿主細胞表面の ACE2に 結合する ⇒ 細胞侵入の瞬間に 膜貫通型セリンプロテアーゼ(TMPRSS2)によって Sタンパク質は S1とS2のサブユニットに切断される(開裂) ⇒ ウイルスの膜融合活性↑  ⇒ 宿主細胞内に侵入 Chung Adv Drug Deliv Rev 170 1 2021

👉 Sタンパク質

ワクチン接種の主要ターゲットである
Sタンパク質は、3つの重要な要素を含んでいる。 ・S1サブユニット ・受容体結合ドメイン(RBD) ・S2サブユニット Chung Adv Drug Deliv Rev 170 1 2021





👉SARS-CoV-2を吸入する

⇒ 肺上皮細胞は パターン認識受容体(PRR) を介して SARS-CoV-2を 病原体として 認識する ⇒ 自然免疫と獲得免疫を媒介する 免疫細胞を動員する分子を 分泌する Chung Adv Drug Deliv Rev 170 1 2021


👉COVID-19初期

SARS-CoV-2によって 1型IFNの産生が遅延する ⇒ 適応免疫反応↓ 宿主の自然免疫系: 肺胞マクロファージによる 病原体関連分子パターン(PAMPs)の認識  ⇒ SARS-CoV-2を検出 ⇒ ウイルスを貪食する or 肺胞マクロファージが活性化する Chung Adv Drug Deliv Rev  2021
















👉COVID-19中期

感染した上皮細胞⇒CD4+およびCD8+ T細胞に ウイルス抗原を提示 ・CD8+T細胞 ⇒感染細胞のアポトーシスを誘導 ・CD4+T細胞⇒Th1に分化⇒GM-CSF産生 ・単球⇒IL-1β産生 ・Th17細胞⇒IL-17産生⇒炎症を誘導 Chung Adv Drug Deliv Rev 170 1 2021



















👉COVID-19 極期

・上皮細胞が欠落した部分からのウイルス侵入↑ ・炎症細胞がさらにサイトカインを放出 ⇒ サイトカインストームが増幅 ⇒ 全身の炎症反応が増悪 ⇒ 最終的にARDS、多臓器不全、致命的となる。 ※ 血管内への侵入と炎症の波及⇒ 血栓症↑ Chung Adv Drug Deliv Rev 2021



















👉変異型

他の病原性ウイルスと同様
SARS-CoV-2は、 自然の進化と免疫圧により 人類集団全体に伝播する際、 突然変異を蓄積し続ける 2020年  少なくとも3つの変異株が生じた (Sタンパクの変異) ・B.1.1.7(英国型) ・B.1.351(南アフリカ型) ・P.1(ブラジル型) Fergie  Front Immunol Mar 19 2021

👉英国型変異株
・野生株(=もともとの株) ・英国型変異株B.1.1.7 英国において、2020.9月から12月の間、 各グループ1,769名を比較した。 ・入院期間 ・28日間の症例死亡率 ・再感染の可能性 いずれも統計的有意差なし(=同等) Public Health England Fergie  Front Immunol Mar 19 2021

👉抗体の持続期間
SARS-CoV-2の検査で陽性となった 3万人を超える米国の大規模研究 約93%が中~高力価の抗Sタンパク抗体を有し 90%以上の人が検出可能な中和抗体反応を示した 抗体価は3か月間安定しており、 5か月でわずかに低下した (より長期の研究が必要) Wajnberg 2020 Fergie  Front Immunol Mar 19 2021


👉 インターフェロンシグナルを抑制

SARS-CoV-2は
人体におけるインターフェロンI型(IFNαとIFNβ)と III型シグナルを 抑制する(産生させない) ⇒  ウイルス自身の生存期間の延長を図り、 肺細胞や肺胞細胞の内部に侵入・定着するのに 十分な時間を確保している ⇒ 肺胞の炎症↑↑ Basak BioEssays Mar 2021


👉SARS-CoV-2に対する免疫反応の持続性

・それが再感染防止にどう寄与するか 現在、解明は不十分 予防効果の持続時間は ワクチン開発や 抗体価減衰を克服するための 定期的な再接種の必要性を考える上で 重要な課題 ⇒ 集団免疫の達成と維持に 大きな影響を与える Fergie Front Immunol Mar2021


👉SARS-CoV-2感染から保護される期間

(推定) Edridgeらは 1980年代から35年間 成人男性10人のコホートを追跡調査 季節性コロナウイルス(CoV)に対する免疫力の 持続期間を調べた ⇒ 季節性CoVに対する防御免疫は 短期間(=6~12カ月間)であった Nat Med 2020 Fergie  Front Immunol Mar 19 2021


👉COVID-19と妊娠合併症

18か国・2130人の妊婦を対象とした研究 感染していない妊婦(1424名)と比較して COVID-19の妊婦(706名)は、 ・重篤な症状 ・死亡 ・妊娠合併症 ・早産 のリスクが有意に高い Papageorghiou JAMA 2021 Kaiser Science Apr 22 2021

👉COVID-19入院患者15名から糞便採取

⇒ ウイルスを対象に RNAショットガンメタゲノミクスシーケンス を施行 ・COVID-19患者15名中、7名: 便中のSARS-CoV-2が陽性だった (胃腸症状がない場合でも SARS-CoV-2の「静止」消化管感染 があることを示すデータ) Zuo Gut 70 276 2021


👉消化管におけるSARS-CoV-2感染

COVID-19入院患者15名中3名が (=COVID-19患者の一部 20%) 呼吸器サンプルから SARS-CoV-2が除去されてから6日後 (=呼吸器感染から回復した後)まで、 糞便(消化管)中では、 活発なウイルス感染の兆候を示し続けた Zuo Gut 70 276 2021


👉COVID-19入院患者

① SARS-CoV-2感染性が高い糞便と ② SARS-CoV-2感染性が低い糞便 の比較 ② では、短鎖脂肪酸産生細菌が豊富に 含まれていた。 ※ 短鎖脂肪酸産生細菌は、野菜・海藻・果物など 水溶性食物繊維を多く摂取すると増える Zuo Gut 70 276 2021


👉COVID-19のサイトカイン濃度

は、 真のサイトカインストーム症候群に比べて 1/100~1/1000倍である 現時点では、COVID-19において実際に どのレベルで免疫が過剰に活性化されているのか その主要な部位はどこなのか 完全には理解されていない L-Linnemann, World Allergy Org J 13  100476  2020


SARS-CoV-2パンデミック  ⇒ ・壊滅的な被害を受けている国 ・感染者や死者がほとんど出ていない国 違いは? ・感染率を下げる要因(風土病がある) マラリア罹患率 回虫罹患率 ・感染率を上げる要因  HIV罹患率 都市在住の人口が多い ※ ワクチン登場前のデータ F-Jones medRxiv 2021.7.12


回虫は土壌伝播蠕虫の代表的寄生虫
虫卵に汚染された植物性食品を食べて感染

1990~2018年(29年間)
計193例の回虫症例が確認された(年平均6.7例)

2002年以降の報告数は激減(年平均1.3例)

杉山 食品衛生学雑誌 4 103 2020

※ 日本では、「回虫⇒SARS-CoV-2感染を減らす」 ルートはない

マラリア流行国 ⇒ COVID-19が有病率が低い 2020.8.1時点 欧州  人口約7億4100万人 COVID-19患者の累積数は 336万人 米国  約3億2700万人 COVID-19患者の累積数 446万人 アフリカのマラリア流行国6か国 (コンゴなど)  約4億人 COVID-19患者の累積数 7万人 F-Jones medRxiv 2021.7.12

ACE2 ・アンジオテンシン変換酵素1(ACE1)と  約42%の相同性(2000年に同定) ・SARS-CoV-2が結合する  ⇒ 細胞表面のACE2脱落↑(sACE2↑) ⇒ 肺胞の局所的なアンギオテンシン II↑ ⇒ 好中球の凝集↑ 血管透過性↑ ⇒ 急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の発症 Hussein Malar J 2020 19 457

抗GPI抗体 マラリア患者体内では、 マラリア原虫特異的抗原に対する 抗体群が作られる その内の一つ グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)分子に 対する抗体(抗GPI抗体)が SARS-CoV-2の糖タンパク質に結合する ⇒ 結果的にCOVID-191に対して保護的な役割 Hussein Malar J 2020 19 457